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高井 静霞; 島田 太郎; 武田 聖司; 小池 克明*
Journal of Contaminant Hydrology, 251, p.104097_1 - 104097_12, 2022/12
被引用回数:3 パーセンタイル:49.4(Environmental Sciences)放射性核種や化学物質により汚染された地下環境に対し、リスクを評価し除染対策を立てるためには、測定データから汚染物質の濃度分布とその不確かさを正確に推定する必要がある。汚染の放出時刻歴が明らかでない場合でも、これを時間方向の相関を考慮して測定濃度から逆解析することで、既知の汚染源から放出された汚染分布とその不確かさを地下水流動を考慮した地球統計学的手法によって推定することができる。しかし、従来の手法には3つの課題があった:(1)実際の汚染事例に対する3次元的な検証例がない、(2)推定値に制限がないため、負値の発生及び不確かさの増大につながりうる、(3)複数の汚染物質を対象とした検証例が少ない。これらを解決するために、本研究では地下水流動を考慮した地球統計学的手法に、ギブスサンプリングによる非負の制限を導入した。そして本手法を、Gloucester処分場(カナダ、オタワ)における地下汚染事例に適用した。評価対象は、水に可溶な3つの汚染物質(1,4-ジオキサン,テトラヒドロフラン,ジエチルエーテル)とした。その結果、1982年の測定濃度(66点)から推定した汚染分布は、全ての汚染物質に対し測定値と高い相関(相関係数R0.7)を示し、本手法の有効性が確認された。特に1,4-ジオキサンに対しては、1978年の実際の大規模投棄に応じた放出ピークが、最小エントロピー法による先行研究よりも正確に推定された。同様の放出ピークは他の汚染物質に対しても、有機炭素含有量からの遅延係数の推定範囲で概ね再現された。
高井 静霞; 島田 太郎; 武田 聖司; 小池 克明*
情報地質, 32(3), P. 95, 2021/09
GEOINFORUM-2021における発表「地下水流動を考慮した地球統計学的手法による汚染濃度分布の推定」が評価され、2021年度日本情報地質学会奨励賞を受賞した。今回の受賞に関する所感を同部会誌に寄稿する。
高井 静霞; 島田 太郎; 武田 聖司; 小池 克明*
no journal, ,
放射性核種や化学物質による汚染が地下で発生した場合、環境修復を適切かつ効率的に行うため、汚染濃度分布の解明が必要となる。しかし汚染が帯水層に移行している場合は地下水流動の影響を受けるため、限られた測定データの単なる空間モデリングでは正確な分布推定ができない可能性は高い。そこで本研究では、地下水流動を考慮した汚染分布の地球統計学的推定手法を検討した。さらにギブスサンプリングにより推定値に対する非負の制限を設け、仮想的なモデルおよび実際の汚染事例(Gloucester処分場、カナダ)に対し有用性を評価した。放出量の時間変化に2つのピークをもつHによる汚染を仮定した仮想的なモデルの評価では、地球統計学的手法(トレンド付きクリギング)では適切な2つのピークがある空間分布を推定できなかったが、本手法では絶対誤差平均2.8E-9でその空間分布を推定可能となった。Gloucester処分場(1,4-ジオキサンによる汚染)では、1982年に取得された69点の測定濃度を用いて3次元の帯水層中の汚染(30030040m)を評価した。その結果最小エントロピー等による先行研究より、非負の制限と地下水流動解析を用いた本手法の方が1978年の大規模放出を高精度で再現でき、測定濃度に対する絶対誤差平均も2.8E-2と小さく抑えられ、本評価手法の有用性を確認できた。
高井 静霞; 島田 太郎; 武田 聖司; 小池 克明*
no journal, ,
放射性核種や化学物質による汚染が地下で発生した場合、適切かつ効率的な環境修復のため、汚染濃度分布の解明が必要となる。汚染が帯水層に移行している場合、限られた測定データの単なる内外挿ではなく地下水流動の影響を考慮する必要があるが、汚染の履歴(各時刻の放出量など)は明らかでない可能性がある。本研究では、地下水流動を考慮した地球統計学的な汚染分布評価手法を検討した。Hによる仮想的な汚染分布(2次元)に対する評価の結果から、測定値の不確かさが小さく水理地質構造が既知である場合、限られた測定点数でも未知量である各時刻の放出量と濃度分布を精度良く評価できることを確認した。さらに実際のケースとして、茨城県神栖市におけるジフェニルアルシン酸(有機ヒ素化合物)による汚染事例を対象に本手法を適用した。評価の結果、濃度分布の推定結果は汚染源直下および井戸周辺での高い測定値の傾向を再現し、評価に用いた32点の測定値に対する絶対誤差平均は3.0mg-As/Lに抑えられた。一方地下水に放出した総ヒ素量は2.9kgと推定され、測定濃度と地下水体積の積としての推計値40.89kgからずれが生じる結果となった。評価精度の向上のためには、水理地質構造の不確かさ(境界条件,収着特性など)の考慮が必要である。